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【なぜ校則では茶髪が禁止なの?】教員は校則について生徒に説明ができるか

第67回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■「校則だから」では納得できない子どもたち

 最大の懸念は、この判決が「考えない教員」を増加させることにならないか、ということである。

 パーマや染色を禁じる校則が、華美な頭髪を制限することで生徒に学習や運動に注力させて非行防止につなげる目的だと判決では認めている。これにどれだけの説得力があるのだろうか。華美な頭髪を制限することで、生徒が学習や運動に注力して非行に走ることはないと、どれくらいの教員が本気で信じているのだろうか

 黒い髪でも学習や運動に注力できない子どもたちは、いくらでもいる。黒い髪でも非行に走る子だっている。
 いわゆる「不良少年・不良少女」が髪を黒髪にしたからといって、品行方正で学習や運動に注力するようになるわけではない。そんな上辺のことで子どもたちの本質が変わるわけではないことは、日々、子どもたちと接している教員なら理解していることである。

 それでも、先の女子高生に対してのように、教員は執拗なまでの指導を繰り返すことになる。先の女子高生のように、それが不登校の原因になってしまうこともありうる。
 これでは教員の目的が、髪を黒くさせることなのか不登校に追い込むことなのか分からなくなってしまう。

 そこまで執拗な指導になってしまうのは、教員が校則の意味を理解していないからである。
 ある公立学校の校長は、「教員は『校則なんだから守れ』と言いがちなんです」と話す。「こういう理由だから髪を染めてはいけない」ではなく、「校則で決まっているから髪を染めてはいけない」となりがちだというのだ。
 これでは、説得力がない。
 子どもたちに「なぜ?」と訊かれたら、はたして答えられるだろうか。「非行の原因になる」などと答えたら、それこそ「えっ?」と思う子どもは多いだろう。

 説得力がなければ、子どもは校則を守ろうとはしない。だからこそ、教員は「執拗な指導」をすることになる。そして、その反発から、生徒が不登校や非行に走る可能性も否定できない。実際、先の女子高生は不登校になっている。これではとてもじゃないが、「適切な指導」とはいえない。

 しかし、それがまかりとおっているのも学校の姿なのだ。これが望ましいものではいことは、あらためて言う必要もない。
 校則を守らせたいのなら、その理由と意義をきちんと教員は子どもたちに説明し、説得できなければならない。そのためには、校則について教員はきちんと考えなければならない。
 大阪地裁の判決を、「校則だから」で済ます理由にしてはならない。「校則だから」を言い訳に、不登校や非行を招くような不適切な指導を防ぐためにも、「考える教員」が必要である。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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